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行動分析の視点から強い営業組織へ




  • 経営改善の会議から

    部長は100年に一度と言われている世界的同時不況の克服と、会議ではいつも前向きな意見がでないことを考慮して、行動分析の視点から業務改善 で評判の講師Kを会議の司会として呼んで、経営改善について討論を行なった。

    講師K: 「きょうの会議では、まず、皆さんに、会社の問題を洗いだし、その問題の改善、解決をしていくにはどのようなことをしていけばいいのか、ということをお聞きしたいと思います。いろいろなお考えがあるのではと思いますが、いかがですか?」

    講師K: 自ら手を挙げて全体を見渡し発言を待つが、全員がだんまりとなっている。

    部長は この雰囲気から、今回の会議も前向きな意見が出ず、成果があがらないで終わるのではと不安に思っている。

    講師K: 「あなたは、どう思います?」 近くで目の合った男性に尋ねる。彼は首をかしげ、しばらくの沈黙のあとに、「うん……それほど、この件であまり意識していなくて、今までどおり一生懸命がんばって仕事していけばと思います」と言った。

    講師K: ちょっとニヤッとして、「なるほど。それが今の正直な感覚なのかな」と言い、「他の方はどうです?」と、歩き回りながら何人かに尋ねてみる。 ある社員 「今まで通り、きちんと働くことだけ考えてます」、「うーん。よくわかりません」

    講師K: そうした発言にもすべてうなずき、「なるほど」と相槌を打ち、「ありがとうございました」と礼を言う。

    辛抱強く意見を聞いているうちに、はじめより場の雰囲気は和らぎ、比較的気楽に自分の意見を言うようにはなってきた。 だが、発言の内容は、まだ今ひとつ頼りない。 突然、営業でいい成果をあげているT君が思わず手を挙げて言った。

    T君 :「今まで通りちゃんとじゃ、つまらないんじゃないか。この100年の一度の大不況だからこそ、より一層の問題意識を持って、もうひとがんばりをして結果を出して会社を発展させたいと、私は思うんだが」

    すると、それを聞いた講師Kの顔が、パッと輝く。 まるで、ひまわりが咲いたような笑顔で、「そうー、そうですよねー」と大声で叫ぶ。そして、
    「皆さんは、どう思われますか?」と聞く。

    少しの沈黙のあとで、おずおずと手を挙げた他の社員が言う。 「そうだな、この未曾有な危機があるからこそ、会社の抱えている問題を意識して、改善、改革のため行動を起こすことにしては」

    講師K 「うーん、確かにー、さすがによいところに着目されますね」。

    すると、クールな顔を心持ち喜びに崩したその社員は
    「製造というのは生産管理部からの指示で行っていて、工夫、改善などの余地が少ないんだよ、 しかし、担当している製品が評判がいいとか、 よく売れている具体的な情報や、お客様とやり取りしたクレームがわかると問題意識を持ちながら製造工程で作業をするので、改善提案や工夫などを考えるようになると思うよ・・・」と続ける。

    さらに営業部の社員が手を挙げた。 「営業も、そうですよ。急にお客様から商品を持ってきてと催促されたとき、在庫商品にないし、生産の状況がさっぱりわからないとき、お客様にどのように説明し、 納得してもらうのか、しどろもどろとなることがある」

    講師K「おお、そうですね!きっと、そうなりますよねー」

    すると今度は、
    情報部員のMさんが
    「現在、新生産管理を設計しています。各製品の製造工程がわかる仕組みにして、営業部の端末から製品の仕掛状況や、ほぼ完成品になるまでの日数がわかるようにします。」

    営業部の社員 「それはいいね。そうなればお客様に製品の納期を聞かれたとき、回答がスムーズにできる。助かりますよ」

    講師K 「あはは・・」とおもしろそうに笑う。 その後も、いろいろな社員からポジティブな意見が相次ぐ。若手の社員から、「業績がよくなったら、南アフリカで開催されるサッカーのワールドカップに行かせてもらえるでしょうか?」などという質問も出て、座がどっと笑いに沸く。

    なんだ、これは? 部長は、内心驚いた。今までうちの社員は、こんなに積極的に発言したこともなければ、前向きだったこともない。一体、ここで何が起きているのだろう? そして、会議は終わった。



  • 会議で何があったか

    部長は講師Kをつかまえて
    「何か、狐につままれたような気がしましたよ。私の部下が、こんなに公の場で発言するなんて。しかも前向きな意見を言うとは。いつも、『もっと前向きに考えろ』『積極的に自分の意見を言え』と命じても、彼らからは何を考えているのかわからない無反応しか返ってこなかったのに・・・」

    部長は講師Kに尋ねた「何か特別なことでもされましたか? 私は気がつかなかったけど」すると、
    講師Kはにこっと笑って答えた。 「さすが部長、大切なところに気がつかれましたね。確かに私は魔法のように奇抜な技を使ったわけではありません。」
    「でも、実は皆さんへの応対には細心の注意を払っていたんです。経営改善という難しい会議でしたでしょう? ですから、皆さん今後に漠然とした不安を抱いていらっしゃるのではないかと思いまして。」

    講師Kは「そこで、まずはポジティブな発言を強化したのです。」
    部長は「強化とは?・・・」
    講師Kは「ええ・・・そして、ネガティブな発言に対しては、好子*(こうし)消失による弱化ということを行ったのです」
    部長は「どのようなことですか?」

    *好子:行動の直前に出現すると、そのことから行動を増やす刺激やできごと。

    「これは失礼しました。行動分析と呼ばれる心理学のセオリーを使ったのです。皆さんに前向きになってほしいと願う部長のお気持ちはすばらしいです。 でも、『前向きになれ』と命令して前向きになるほど、人間は単純に行かないでしょう?  それに、そもそも、前向きな意識というものは何なのか、実は正体が漠然とし明確な行動に結びつかない。 行動分析は、ともかく人の行動を変化させます。そこから、いわゆる意識というものも変えていくのです。」
    「ポジティブな言動が、ポジティブな意識を作る。これが行動分析の考え方なのです」
    部長は頷きながら「ふーん。何か、わかるような、わからないような……」

    「あはは・・。そうですよね。それでは、まずは好子というものと、強化・弱化についてご説明します。」

    部長が狐につままれたのは、自分の部下たちが、これまでの会議では、いくら「もっと前向きに」とか「積極的に」と言っても、何の反応もしなかったのに対し、講師Kが進行した経営改善会議では、 公の場で発言したどころか、その発言もきわめて前向きの発言であったという点である。




  • 行動分析の視点から

    1) 部長は個人攻撃の罠にはまっている
    行動分析では、心や性格といった人間の内面で行動を説明しない。 多くの人々の例にもれず、部長もまた、部下たちが会議で発言しないのは、「前向きな意識」が欠如している、「積極性」がないからだというように、部下の行動の問題を、意識や性格といった、医学モデルで考えている。

    2) ヒトは指示だけでは動かない
    もう一つ大切なことは、人間は指示だけでは動かないということだ。「……しろ!」と指示するだけで、相手がそれをしてくれるのなら、上司も親も教師もどれほど楽なことはない。

    自分が望むことを、相手がしてくれないとき、なぜできないかの分析、どうすればさせられるかの対応策には3つのレベルがある。

    第1のレベルは、やり方を知らなかったり、やる意義がわからなかったりする場合、つまりやるべきことに対する知識が欠けているレベルである。その場合には、もちろん知識を与える必要があり、指示は有効です。

    第2のレベルは、頭ではわかってはいるが、技能が伴わないというレベルで、このときに必要となるのは練習である。できるのにやらない、というレベルである。
    第3のレベルは、頭ではわかっているし、できるのにやらない。というレベルである。



  • 行動原理に基づいた手法

    部長の部下たちがこの場面で求められていた行動は、発言、とりわけ前向きの発言である。第1レベルの知識に関しては、声の出し方を知らなかったり、会議において発言することの重要性を知らなかったということはないだろう。

    第2レベルの技能に関しても、講師Kの会議では果敢に発言したのだから、発言技能がないということもありえない。そうなると、部下の問題は、第3レベルにある。
    行動分析では、ヒトの行動の原因は心や性格にあるのではなく、行動の結果、、詳しくは、行動の直前から直後への状況の変化にあると考える。行動する前に出した指示よりも、行動したあと、聞き手に何を返すかが重要なのである。 社員の発言の直後に講師Kが返したリアクションは次のようなことだった。

    ・「今までとおり一生懸命ガンバッテて仕事していけばと思います」という発言に対して、ニヤッとして、「なるほど」と応じた。歩きながら、次々と指名し、すべての発言に対して、うなずきながら、「なるほど」「ありがとうございました」と応じた。

    ・営業のT君の「今まで通りちゃんとじゃ、つまらないんじゃないか。」という前向きの発言に対し、即座にひまわりが咲いたような満面の笑みを返し「そう! そうですよね!」と大声で叫んだ。

    ・開発部の社員の「そうだな、このような機会があるのだから、会社の抱えている問題を意識して、改善、改良のため行動を起こすことにしては」 という前向きの発言に、「確かにー・さすがによいところに着目されますね」と応じた。

    ・営業部の社員の、「営業も、そうですよ。急にお客様から商品を持ってきてと催促されたとき、在庫商品にないし、生産の状況がさっぱりわからないとき、 お客様にどのように説明し、納得してもらうのか、しどろもどろなることがある」 と発言に対して、「おお、そうですね!きっと、そうなりますよねー」と応じた。

    ここで注目すべきは、発言の内容ではなく、それぞれの発言に対する講師Kのリアクションだ。 はじめは、ニヤッと笑ったり、「なるほど」と相槌を打つだけだったのが、だんだん、「そうですよねー」「確かに!」「すばらしい!」「あはは」と大笑い……となっていく。なるほど、講師Kはリアクションを使い、指名しながら発言を引き出していくうちに、だんだん前向きの発言が増えていくように、戦略的に行っているのだ。



  • 行動分析の視点から営業日報を活用

    予算を達成するためには、営業マンはお客様の多様なニーズを汲み取り、情報を集め上司や他社員の意見を共有しながら、チームワークでお客様の問題解決を行うことである。
    その前提として、営業マンがお客様と商談したことを素直な視点でとらえて、報告としてあがってくることが必要である。そのためには、会議の発言と同じように、マネジャーは営業マンの報告を受けたらタイミングのいいリアクションを行うことが大切です。

    リアクションは
    ・内容はいい感じ
    ・次の商談につながる内容だ
    ・そこまでのことを聞きだせたか
    ・その調子なら受注は早いのでは
    ・その内容なら次回の報告を楽しみにしている
    ・もうすこし詳しいことを聞きたいよ
    ・現場の雰囲気がよくわかる
    ・報告から毎日良くなってきたね
    ・いい感触になってきた、その調子で
    ・その問題はよく聞いてきたね、解決には○○君に
    ・手ごたえある報告を待っているよ
    ・よくそれを考え出したんだね
    など
    気持ちが伝わるリアクションを回答するようにすれば、自然に部下はお客様への訪問で意義のある質問をして、お客様の現場から問題や課題がることに気づき、 問題を聞きだしてくる。 営業日報の意義ある報告と、上司と部下とのコミュニケーションから、営業マンはお客様へ問題解決のヒントとなる報告を行うようになる。
    そのことにより営業部は強い営業組織になり、期待された成果があがる。

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