• トツプ営業1000人分析

    才能やセンス、テクニックが重要ではない.
    営業マンをその気にさせ、伸ばすことができる組織があった。 売れる営業マンには才能ではなく「きっかけ」があった 一般に「営業マンはセンスだ」といわれる。実際にスキルやセンスに優れ た営業マンばかりを採用し、そうした人たちの力量によって販売を維持して いる会社は少なくない。

    だが、今回の調査から読み取れるのは、センスやテ クニック以前に当人の「意識」がきわ,めて大事だということだ。 繰り返しになるが、調査対象はすべて現役のトップセールスである。彼ら の話を聞いていると、そこには共通したストーリーがあることに気づかされ る。

    おおむね次のようなものだ。

    トップセールスになる前は、失敗や挫折を経験し苦労が絶えなかった。だ が、あるきっかけから「これじゃいけない」「今のままじゃダメだ」と考える ようになり、そこで「問題を解決するためにどうすればいいか」を自分で考< えたり学んだりするようになった。その結果、いろいろ試しているうちに販 売成績も上がっていった。


    1件目をどう売らせるかが決め手

    それでは、どんな「きっかけ」で売れるようになったのか。 1番多かった回答は「上司、先輩の一言・サポート」。2番目は「実際に1件売ってみて、 初めて気づいたり見えたりしたものがある」ということだ。

    1件目は自分の力だけでは売れないので、上司に同行してもらう。 そこから「ああ、こうやって売ればいいんだ」と学び取り、それがベースになったというのである。 3番目は「お客様の言葉」。お客さんから怒られたり褒められたりしたのをきっかけに、 何がよくて何が悪いのかを初めて自分の中で構築することができた、という。 4番目は「本や雑誌の言葉」。 5番目は「失敗や挫折への反発」だ

    ここから分析できるのは次のようなことだ。 まず1つ目と2つ目は、マネジメントがいかに重要かということを示して いる。最近は組織のフラット化が流行のようになっているが、こと営業に関 しては、依然として"引っ張ってくれる上司"が必要なのだ。といっても、 やみくもに熱意で引っ張るのではなく、ある程度リードしつつ、部下のいいと ころを巧みに引き出すマネジメントである。

    一方、当人の胸中には「上司をいつか超えたい」という強い思いがある。 上司を尊敬しているからこそ、上司の一言が心に突き刺さるのだ。 たとえば、こんな言葉である。

    「背伸びしなくていい。今の自分で何ができるか考えなさい」、 「いったん断られてから、いかに頑張るかが大切なんだ。断られてからが本番だぞ」 、「飛び込みのときは、家族に見られて恥ずかしくないような営業をしろよ」 ……などなど、聞いてみると意外に難しいことではなく、ふつうの言葉が多い。

    つまり、ここで大事なことは「誰からいわれるか」であり、「何をいわれる か」は二の次なのだ。

    尊敬していない相手から何をいわれても心には響かない。やはり「あんな ふうになりたい」「1〇年後、自分はこういうふうになっていたらすごい」と 思える相手でなければ意味がないのである。

    先にも触れたように、最初の1件目を売るのは個人の力ではなく会社の力 である。どうやって』件目」を売らせるのか。それを体験させ学ばせるの も、マネジメントの力である。

    これは「とにかく飛び込みをしてこい!」というような意味の[体験] で はない。個人任せの属人的営業は完全に時代遅れだ。 つまり、飛び込みやテレアポによって数を稼いで売らせるという方法では、 ぜんぜん能力がなくてもタイミングがよければ売れることがある。

    すると、 経験が生きないのですぐにまた売れなくなる。 逆に、タイミングが合わない場合は、潜在的に力があってもそれを発揮でき ずに、「売れない営業マン」のレッテルを貼られてしまうこともある。
    したがって、会社が組織的な売り方をしているということが大前提になる が、そこのある一部分を担当させる。 あるいは契約が取れたあとや、取れるか取れないかくらいのお客さんを担当 させてフォローをずっとやらせる。

    つまり組織営業における「結果」を見せ るということが大事なのである。

    上司はよく「自分で考えて工夫しろ」という。しかし結果を見せずに「工夫 しろ」では、できるはずがない。だから、まず結果を見せて、これを得るた めの工夫なのだということを最初に体験させる。そうすることで、「こうやっ てみよう、ああやってみよう」とアイデアが生まれてくるのである。

    「きっかけ」の3番目と4番目は、お客さんや本・雑誌からの言葉である。 上司の言葉と同じで、回答者があげている言葉はどちらかというと平凡なも のが多い。 たとえばお客さんに「ありがとう」といわれる。営業マンによっては、そ のときに何も感じない人もいるが、これをきっかけに仕事への取り組み方を 変えてトップセールスに駆け上がる人もいる。 では何が違うのだろうか。

    結局、「自分ももっと売れるようになりたい」と念じている営業マンでなけ れば感じることはできないのだ。 こう述べると当たり前のようだが、営業の現場では「売りたい」と思って いる人は意外なほど少ない。もちろんノルマが達成できるくらいは売りたい と思っているが、「1番になりたい」、「断トツの成績をあげたい」と念じている ような人は、ほとんどいないのである。

    最近は、1番になることよりも趣味のほうが大事だと公言する営業マンも 少なくない。そういう人たちを「1番になりたい」と思うように開眼させて いく。そのことが何よりも大切だといっていい。
    若い営業マンは、極端にいうと「売ったらインセンティブくれるなんて当たり前でしょ」という思いがある。
    だから、お金以外のインセンティブによって「売りたい!」と思うように仕向けないとダメなのである。
    たとえば「売れたら好きな時間に帰っていい」ということも、大きなインセンティブになりうる。 さて、最後に5番目(失敗や挫折への反発)である。

    この回答を聞いて私が実感したのは「失敗や挫折のときに営業マンを切り捨てない組織は強い」ということだ。
    現実には売れない営業マンをどんどん捨てていく会社もあるが、 結局は、ある程度挫折した人を拾っていけるような組織のほうが強いのである。
         
                  参考文献:PRESIDENT 2006.11.13 号 トップ営業1000人分析